築年数の古い木造住宅に住む方は、本当は耐震対策をしたくても費用が非常に高額なため、なかなか耐震対策ができないのではないでしょうか。
このコラムではDIYで簡単に安く耐震対策工事を行うために、以下の内容で情報を公開しています。
なぜ耐震補強工事は普及しないのか
日本は古くから多くの震災が発生して来ましたが、直近では2024年元旦に能登半島で震度7の地震が発生し多くの方々が亡くなられました。ご冥福をお祈り申し上げます。
現在もまだ調査は続いていますが、能登半島地震は阪神大震災、熊本地震、東北大震災と比べ家屋の倒壊による死亡率が高く、亡くなられた方の実に40%以上が建物の倒壊により命を落とされています。(NHKニュースより)
能登半島では古い木造住宅だけでなく、新耐震基準といわれる1981年改定の建築基準法に準拠した家屋も約半数が倒壊しています。(読売新聞オンラインより)新耐震基準は震度6でも家屋が倒壊しないと言われていたのですが、倒壊した家屋の多くは柱が基礎の土台から抜ける「ほぞ抜け」の状態となり、2階部分の重さに耐えられず倒壊しているのです。
国は阪神大震災の教訓を経て、2000年に建築基準法を改訂し(2000年基準)、柱と基礎を金具(ホールダウン金物)で固定することを義務付けています。柱の「ほぞ抜け」を防ぐためです。柱が基礎の土台から抜けなければ家屋の倒壊を防ぐことができることが、阪神大震災で証明されたためです。
能登半島地震で倒壊した家屋はご高齢の方の住宅が多く、築年数の古い木造住宅がほとんどです。そのため2000年基準の住宅はほとんどなく、家屋が倒壊して非常に多くの方がお亡くなりになりました。家屋の倒壊が人の命を奪うのです。
そこで私たちは、1件でも多くの2000年以前に建てられた木造住宅の方々に、「誰でも簡単に」、「最も安い費用で」、「必要最低限の耐震補強工事」を行っていただくにはどうすればよいかと考えました。
私たちは耐震補強工事を検討する方の多くが、リフォーム会社や工務店から高額な工事費用を見積もられ、予算が合わず工事できていないのではないかと考えています。多くの行政で設定されている耐震補助金も、補助基準をクリアするために壁をはがし屋根を取り換えるなど大掛かりな工事を行わなければいけません。わずか数十万円の補助を受けるために、数百万円の耐震補強工事を行わなければならないのです。これでは、耐震補強工事が進むわけがありません。
必要最低限の耐震補強工事とは?
前述のように、家屋が倒壊する理由のほとんどは「柱のほぞ抜け」です。今までは、仮に「柱のほぞ抜け」を防止するために耐震補強金具(ホールダウン金物)を後から取り付けようとしても、家の壁を剝がさなければなりませんでした。そのため工事費用も高額となってしまうのです。
そこで私たちは、家の壁を壊さず建物の外から基礎と柱をがっちりと固定する方法がないか研究し、外付けホールダウン金物を考案いたしました。今までに12000件以上の住宅に設置いただいています。設置はグループの施工会社や施工代理店が行っているのですが、工事の内容が非常にシンプルなためわずか半日で作業が終わることがほとんどです。
私たちはこの工事内容であれば、ちょっとしたDIYができる人なら自分でできるのではないかと考えました。そこでこのたび「耐震DIY普及センター」という組織を立ち上げ、一人でも多くの人に必要最低限の耐震補強工事をDIYで行っていただきたいと考えたのです。
私たちが考える必要最低限の耐震補強工事とは、建物の外側から四隅の柱と基礎をホールダウン金物で固定するというものです。柱と基礎のそれぞれに金具をボルトで取り付け、2つの金具を引き寄せ金具で固定するのです。がっちりと取付られたホールダウン金物は震度6にも耐える引き抜き強度があります。そのため地震の時に柱が土台から抜ける「ほぞ抜け」が発生せず、倒壊のリスクを最少限に抑えることができるのです。
本当にDIYで耐震補強工事できるのか?
私たちが提唱する外付けホールダウン金物のDIYによる取付けですが、DIYを成功させるためのポイントが2つあります。
- コンクリートの基礎部分にきれいに穴を開けること
- 柱の位置を正確に見つけること
木造住宅の場合、基礎部分は必ずコンクリートで作られていまが、このコンクリートに穴を開けなければいけません。一般的に普及している電動ドライバーやインパクトドライバーではコンクリートに穴をあけることはできません。硬めの金属用ドリル刃をつけたとしてもコンクリートに穴を開けることはできないのです。
そこでコンクリートに穴を開けるために、刃の先が振動するドリルハンマーを使います。振動によって少しずつコンクリートに穴を開けていくのです。ドリルハンマーを自宅に持っている方は少ないと思いますが、私たちはホームセンターやレンタル業者でレンタルされることをおすすめしています。なにもこの耐震工事のために高額なドリルハンマーを購入する必要はありません。店舗にもよりますが、意外と安い金額でレンタルできます。専門のレンタル業者であればネットで申込み、宅配で配達・返却できるところもあります。
また、ドリルハンマーの使い方はそれほど難しくないため、一般の方でも十分に使用できると思われます。詳しい施工方法はこちらに記載していますので、ご参考ください。
2つ目の柱の位置を見つけるための簡単な方法をご紹介します。
ホールダウン金具を何ヶ所につけるかによって異なりますが、家の四隅には必ず取り付けてください。家の四隅には必ず柱がありますから、まずは家の四隅をおさえることが大切です。
ただし1点だけ注意していただきたいポイントがあります。古い木造住宅は、建設時に浴槽の周りをブロック塀で1mくらいの高さまで囲ってから、その上に土台を固定し柱を立てている場合があります。浴槽は濡れて湿気がありますので、ブロック塀の上にモルタルを塗ってタイルを張り付けているのです。そのためもしも四隅や金具を取り付けたい位置に浴室がある場合には、ブロック塀は石膏ボードと同様に締まりがなくコーチボルトが効きませんので、このブロック塀の上の柱部分にボルトを打つ必要があります。四隅や金具をつけたい柱の位置に浴室がある場合は、必ず浴室用のロングタイプ金具を使用してください。引き寄せ金具の長さが160cmあるため、ブロック塀の上の柱にコーチボルトを正確に打ち込むことができます。
また、四隅以外の柱を見つけたいときは、まずは窓枠の両端を探ってみてください。木造住宅の窓の両端には、窓を取り付けるため必ず柱があります。窓枠の端からすぐ横には必ず柱があり金具を取り付けることができます。
まとめ
この記事では、耐震補強工事はDIYで自分で簡単にできることをご紹介してきました。2000年以前の木造住宅に住んでおられる方は、地震が来て柱が抜けて家が倒壊して命を落としてしまわないように、最低限、家の四隅に外付けホールダウン金具を取り付けてください。
しかし耐震補強に高額な費用をかける必要はありません。DIYができる方であれば、誰でも金具の費用だけで簡単に耐震補強工事を行うことができるのです。四隅の設置で15万円以下で設置できます。
日本全国の様々な地域で南海トラフ地震の可能性が極めて高まっています。必要最低限の耐震補強工事を一人でも多くの方に行っていただきたいです。私たちは、一人でも震災で亡くなる方が少なくなるよう、20年以上この活動を続けています。これが私たちの使命であると考えています。
筆者紹介 株式会社フルハウスミル代表 吉山栄起です。私は阪神淡路大震災の経験者です。被災の経験から一人でも多くの方を地震から救いたいと願い耐震補強金具パワープレートを開発いたしました。今まで20年以上にわたり、できるだけ安く、一人でも多くの方に耐震補強していただけるよう活動を続けています。おかげさまで累計施工件数は12,000棟を超えましたが、国内にはまだ1,000万棟を超える旧耐震基準の木造住宅が残っています。私たちは早急に耐震補強を普及させなければいけないとの強い想いから、このたびDIYで耐震補強工事をしていただける「耐震DIY普及センター」を立ち上げました。