DIYで耐震補強は大丈夫?耐震補強の目的・種類・費用からDIYに適している家を大公開

DIYでの耐震補強

耐震補強にはたくさんのやり方があり、費用も工事期間も様々です。ここでは、私たちがお勧めしているDIYでの耐震補強に適している家とはどんな家なのか、なぜDIYでの耐震補強で大丈夫なのかについて、他の耐震補強のやり方と比較しながら詳しく解説します。

今一度、耐震補強の目的を確認してください

耐震補強を検討するとき最も大切なことは、あなたがなぜ耐震補強をしようと思ったのかその目的について今一度確認してみることです。地震が来たとき命を落とさないようにしたいという思いは当然ですが、自分でははっきりと意識していない目的があるはずです。ただやみくもに耐震補強をするという思いだけで検討を進めるのではなく、あなたの耐震補強の目的を次のように整理してみるとわかりやすいのではないでしょうか。

耐震補強の目的とは

まず、築年数が24年(2024年時点)未満の新耐震基準(2000年基準)で建てられた家に住む方は、ひとまず大きな地震(震度6程度)が来ても家が倒壊するリスクは少ないと思われます。そのため耐震補強をしっかりと検討する必要はないかと思われます。どうしても不安な方は、シェルターなどのより完璧な耐震補強を検討されてはいかがでしょうか。

一方築24年以上の家に住む方は、少なくとも何らかの耐震補強が必要だとお考え下さい。その際、私たちがみなさまにお考えいただきたいことは、「あなたはその家にあと何年住みたいですか?」ということです。言い換えればこれが耐震補強の「目的」とも言えるのではないでしょうか。

耐震補強の目的4つのパターン

この耐震補強の目的は、おそらく4つくらいのパターンに分かれるかと思います。私たちはそれぞれのパターンに最適な耐震補強について次のように考えています。

No 何のために あと何年住みたいか 最適な耐震補強のやり方 かかる費用
1 自分たちだけでなく子供たちに家を残したい できるだけ長く リフォームを含めた万全の耐震補強を実績のある工務店等に依頼してください。 300万円以上(一部補助金を活用できる可能性があります)
2 夫婦二人で残りの人生を安心して暮らしたい(確実で安全な耐震補強をしたい) 20年以上 耐震補助金を利用して耐震診断、耐震計画を経て、補助金をもらえるよう耐震補強を行ってください。 150万円~200万円(行政機関により100万円程度補助金を利用可能な場合があります)
3 夫婦二人で残りの人生を安心して暮らしたい(費用はできるだけかけたくない) あと20年くらい 地震が来たとき命を落とすリスクを減らす必要最低限の耐震補強を行ってください。 DIYで柱のほぞ抜けを防ぐ耐震補強を行う場合、実費用は15万円以下で可能です。
4 危険なことはわかっているが今さら耐震補強する余裕がない 考えられない 実際には何もしない 0円

No.1のパターンでは、家を建てるときと同じようにしっかりと対応できる工務店等を見極めることが大切です。ご予算の許す範囲で、納得のいく耐震性の高いリフォームを行ってください。もともと地震で家が倒壊しないよう耐震性を高めることが目的であったはずが、いつの間にか見栄えを優先するリフォームに目的がすり替えられ、非常に高額な耐震リフォームになってしまうこともあります。ご自身が納得のうえ進めるのであれば何の問題もありませんが、多くの業者がそうであるように、少しでも施工項目を増やそうとする業者にはご注意ください。

No.2のパターンでは、住みたい年数から逆算して「20年以上もつ耐震補強」がどのような耐震補強なのか、また「補助金をもらうために必要な耐震補強」がどのような耐震補強なのかをよく検討してから耐震補強を行ってください。行政機関が補助する耐震診断は、認定を受けた専門家が診断(インスペクション)しますので、上記の2つの耐震補強について最適なアドバイスが得られるかと思います。このようにして実施される耐震補強の費用は150万円から200万円程度(木耐協 耐震診断結果 調査データより)と言われていますので、補助金を最大限に活用できれば50~100万円程度で耐震補強することも可能です。これからの人生の安心の対価としてこの予算が許されるのであれば、しっかりとした耐震補強としてご検討していただきたい方法です。

No.3のパターンは、大きな地震が来たとき家屋が倒壊し命を落とすことがないよう必要最低限の耐震対策を行い、費用はできるだけ抑えるというパターンです。築年数の古い旧耐震基準の建物だけでなく、1981年6月から2000年5月までに建てられた新耐震基準の家も、下記の表にありますように震度6クラスの地震が発生すると約20%の家屋が倒壊する危険性があります。

熊本地震の耐震基準別被害の比率

問題はNo.4のパターンです。私たちが再三お伝えしているとおり、高齢者の方が住む旧耐震基準の家(1981年5月以前に建てられた家)は、大きな地震が来るとかなり高い確率で家屋が倒壊して命を落としてしまいます。築年数が古く耐震補強が必要なことはわかっていても耐震補強する気力がなく、そのまま放置してしまっているのではないでしょうか。私たちは、この旧耐震基準に住む高齢者の方々に1軒でも多く必要最低限の耐震補強をしていただきたいと考えています。私たちは実に20年以上もこの活動を行っています。詳しくはこちらの「耐震DIY普及センター」をご覧ください。

「柱のほぞ抜け」が命を奪う

大きな地震に備えて必要最低限の予算で耐震補強を考える場合、最も低予算で実現可能なのはDIYによる外付けホールダウン金物の設置です。家が倒壊するメカニズムとして最も多いケースは、筋交いが入っているため壁が崩れるより先に柱が土台から抜けてしまう「柱のほぞ抜け」が起こるケースです。

柱がほぞ抜けする理由
柱のほぞ抜け

この「柱のほぞ抜け」さえおこらなければ、100%家屋が倒壊しないわけではありませんが、少なくとも地震が来たとき家の外に逃げる時間は稼げます。私たちがお勧めしている必要最低限の耐震補強とはこの「柱のほぞ抜け」を防ぐ耐震補強です。しかも壁を壊さず家の外から耐震補強金具を設置するため、費用を最小限に抑えることができます。費用を少しでも抑えることによって、今まで耐震補強をあきらめていた人たちに耐震補強していただくことが一番大切なことです。柱と基礎がしっかりと固定されていれば、何もせず地震で命を落とす可能性は抑えられます。DIYでの耐震補強はこちらで詳しくご案内しています。

工事の種類と費用から考える耐震補強

耐震補強工事にはさまざまな種類がありますが、平均的な30坪の木造二階建て住宅の場合の耐震補強の費用感と耐震の効果を多くの資料から調べてみるとおおむね下記のようになります。(費用が高額な順に並べています)

工事の種類 工事の内容 平均費用 耐震の効果
地盤改良 地盤の安定性を保つため軟弱な地盤を強固な地盤へ人工的に改良する工事 100万円~200万円
屋根の軽量化 瓦屋根やセメント屋根など重たい屋根を鋼板屋根などに軽量化する工事 100万円~200万円
壁の量を増やす 窓や開口部の一部を耐力壁に変更し壁の量を増やす工事 100万円~200万円
基礎の補強・増し打ち ひび割れた基礎の補強や内側に鉄筋を入れた基礎を打ち増す工事 100万円~150万円
壁の配置バランスを調整 壁が片側に偏っていてバランスをとるため耐力壁を設置する工事 50万円~100万円
柱と基礎の緊結(壁を壊す場合) 柱と基礎をホールダウン金物で固定する工事(内壁または外壁を壊す) 50万円~100万円
柱と基礎の緊結(外付けの場合 業者依頼) 柱と基礎をホールダウン金物で固定する工事(壁を壊さず外から施工) 20万円~30万円
柱と基礎の緊結(外付けの場合 DIY) 柱と基礎をホールダウン金物で固定する工事(壁を壊さず外から施工) 15万円以下

建築士などの専門家による耐震診断を行い、それぞれの家屋に必要な耐震補強を行うことができればベストですが、通常は複数の耐震項目となるため平均的な費用としては150万円から200万円となります。

耐震補強の中で費用と耐震効果から考えると、柱と基礎の緊結を外付けで行う方法が最も費用対効果に優れていると言えます。外付けホールダウン金物をDIYで取り付けるにはどうしたらよいかについて、こちらで詳しくご案内していますので、是非ご覧ください。

DIYでの耐震補強の意味

耐震補強をメインの職業としているリフォーム会社や工務店の方々にとっては、DIYで耐震補強をやられてしまうと商売になりません。そのため、多くのリフォーム会社や工務店では、「DIYでの耐震補強はあくまでも簡易的なものとお考えください」というメッセージが目立ちます。

しかし私たちは、費用が高額であるという理由でいつまでもズルズルと耐震補強をしない方々に、たとえ完璧な耐震補強ではないにしても、大きな地震が来た時に最低限逃げ遅れることがないようにしていただきたいと考えていますので、最も費用がかからないDIYでの耐震補強をお勧めしているのです。

何もせずに放置して地震がきて命を落としてしまうほうがよいのか、完璧ではないにしても最低限の耐震補強を自分の手で最安の費用で行うのか、本当に真剣に考えていただきたいと思います。

吉山栄起

筆者紹介 株式会社フルハウスミル代表 吉山栄起です。私は阪神淡路大震災の経験者です。被災の経験から一人でも多くの方を地震から救いたいと願い耐震補強金具パワープレートを開発いたしました。今まで20年以上にわたり、できるだけ安く、一人でも多くの方に耐震補強していただけるよう活動を続けています。おかげさまで累計施工件数は12,000棟を超えましたが、国内にはまだ1,000万棟を超える旧耐震基準の木造住宅が残っています。私たちは早急に耐震補強を普及させなければいけないとの強い想いから、このたびDIYで耐震補強工事をしていただける「耐震DIY普及センター」を立ち上げました。